24Jun
値動きの原理を知ることは、マーケットとコミュケ-ションがとれるようになるということ。これができないと根本的な問題解決になりません。
マーケットに織り込まれた物理原則
相場の値動きを表すとき、物理的な表現がよく使われます。
「売りは迅速、買いは悠然」
「売り注文はショート、買い注文はロング」
これらは、価格の上昇はゆっくりで下落は一気にさがる、スピードの違いをたとえたものです。
価格の変動は重力の影響を受けないのに変ですよね。
ニュートンは物体が影響を受ける原因は”力”であることを発見しました。
- 止まってる物体は別の力が加わるまで停止し続ける。
- 動いてる物体は摩擦や抵抗がなければ、いつまでも同じ速度で動く。
- 同じ力を加えたとき、物体の質量が重ければ動きにくい。
- 同じ力を加えたとき、物体の質量が軽ければ動きやすい。
我々は日常生活を通じて、こうした物理現象を目の当たりにしているので、潜在意識に物理感覚が根付いています。
そういう人間がマーケットを見れば、観念として持っている物理法則が織り込まれるのは不思議じゃありません。
価格の節目は投資家がつくる”心理の壁”なのですが、まるで物体が壁に当たった時の感覚を覚えます。
急落すれば、落ちるナイフを掴まぬよう、勢いが収まるのをWボトムで待ち。
レンジ上下限の逆張りやオーバーシュート・アンダーシュートでの反発狙いのときにも物理的な感覚があります。
物理学には”運動量”と”運動エネルギー”という力学の基本概念があります。
- 運動量はベクトル(方向性)を持ち、”空間座標”に影響される。
- 運動エネルギーは蓄えられた仕事をする能力、ベクトル(方向性)を持たず”時間”に影響される。
- 運動量と運動エネルギーは、どちらも”質量(重さ)”と”速度”に関係する。
この物理原則を相場空間にアレンジして、次の3原則を考えました。
- 運動モメンタムはベクトルを持ち、タイムフレームの質量×速度で表され、”価格”に影響される。
- 運動エネルギーはベクトルを持たず”時間”に影響される。
- 運動モメンタムと運動エネルギーは”タイムフレームの質量”と”速度”に関係する。
相場分析が難しいとされる所以は、複数タイムフレームの存在です。
異なったベクトルを持つタイムフレームがぶつかり合うことで摩擦抵抗が生じ、運動モメンタムを弱めレンジ化させます。
質量の大きな上位足の上昇運動モメンタムは、質量の小さな下位足の下降運動モメンタムを崩します。
質量の小さな下位足の上昇運動モメンタムは、質量の大きな上位足の下降運動モメンタムを崩せません。
複数タイムフレームは個別の相場空間に存在してるのではなく、ひとつの相場空間を共有していて、下位足は上位足の支配下にあるとすれば単純化できます。
例えるなら、町内・市内・県内・国のような入れ子構造になってるので、国の政策は町内まで及びますし、権力の弱い市長の力では国のルールを曲げることができません。
3つの物理原則をトレードに活かす。
それでは、前述した相場の力学3原則をどうトレードに活かすのかを考えてみましょう。
1.運動エネルギーに方向性はない。
運動エネルギーそのものに方向性はありません。
運動エネルギーの蓄積段階にバイアスをかけすぎてないでしょうか?
「待つも相場」とは、運動エネルギーが満充電され、方向性を持った運動モメンタムに変換されるのを待つ、という意味です。
たとえば、上昇トレンドの”押し目形成”とは、運動エネルギーをバッテリーに充電することです。
この段階では、まだ運動モメンタムに変換されてなく、浅い押し目などでは一時的に崩れることもよくあります。
値動きは注文が入ることで起こりますが、ポジションには”顕在ポジション”と”潜在ポジション”があります。
顕在ポジションはチャートに値動きとして描かれていますが、潜在ポジションはチャートにまだ描かれてません。
潜在ポジションは”新規エントリー”と”決済(損切り・利確)”で顕在ポジション化します。
上昇トレンドが出てるなら、潜在的な新規買いポジションが多いので上昇しやすいわけです。
この潜在的な新規買いポジションの発生座標を予測してロングするのが押し目買いです。
運動エネルギーにも”顕在エネルギー”と”潜在エネルギー”があります。
顕在エネルギーはチャートに”レンジ”として描かれていますが、潜在エネルギーはまだ描かれてません。
上昇の源流、最初の一滴は売りポジションの決済であり、そこに新規の買いポジションが流れ込むことで大きな流れ(運動モメンタム)が生みだされます。
ただ、そこまでピンポイントで神経質にならなくても、上昇トレンドでロングすれば、運動モメンタムの流れに乗ることができます。
大切なのは、ベクトルのない運動エネルギーとなベクトルのある運動モメンタムの違いを理解して混同しないこと。
分析とは理解しやすく分けることです。
2.速いから強いわけではない。
- 物体の質量が軽いと、動き始めが鋭くスピードは速いが、突破力がない。
- 物体の質量が重いと、動き始めが鈍くスピードは遅いが、突破力がある。
野球のボールと砲丸投げの球、同じ速度ならどちらの破壊力が強いでしょう?
時速150キロで飛ぶ砲丸投げの球をまともに喰らえば死にますよね。
運動モメンタムの強度は速さだけでなく、タイムフレームの質量×速度で決まります。
ユロドルの背景は2021年高値での天井形成中でキリサゲの2番天井、ここでの約1ケ月のレンジ形成で十分な運動エネルギーが蓄積されてました。
日足クラス2番天井形成の質量は大きく、ただでさえ落下スピードがつくなかでの、FOMC待ちからのサプライズです。
そもそも、日足クラスのネックラインへの運動モメンタムがあった上に、FOMCで加速され、4時間ラス押し目安値もあっさり突き抜けました。
基本的に短期足は速く、長期足は遅く動きます。
いくら速くても、質量が小さければ運動モメンタムの強度が低いので上位クラスの節目は突破できません。
ズルズルとした上昇であっても、それが上位クラスN波動の一部だったりすると止まらないです。
後からロングすればよかったとなりますが、ズルズル上昇だと途中入りが難しかったりします。
”相場の勢い”を見ろ、といわれますが、勢いの定義が曖昧なので、ボクは運動モメンタムのことと理解してます。
いつも、”ダマシ”に釣られてしまう人。
いつも、高値・安値を更新させる投機筋の人為的な仕掛けによる逆行現象(スパイク)に釣られてしまう人。
これらに覚えのある人は、値動きの速さと強さを混同している認識を改めるべきでしょう。
3.運動エネルギーは放出される。
運動エネルギーは運動モメンタムに変換されます。
運動エネルギーを蓄電するバッテリーの容量が”タイムフレームの質量”で、運動モメンタムの強さを決める要素になります。
高値や安値を掴む傾向の人は、このバッテリー残量が10%未満になってるのに気づかないのです。
運動エネルギーは運動モメンタムに変換され徐々に減少していきます。
その先細り具合をみて、順張り派の利確や逆張り派の仕掛けが入り始めます。
上昇トレンドなら、上昇加速でエネルギーを放出、下降減速時にエネルギーを回生しますが、3回ほど波をつくればバッテリーが空になります。
下降トレンドなら、下降加速でエネルギーを放出、上昇減速でエネルギーを回生します。
レンジのなかは加速も減速もありません。
EV車がバッテリー容量に応じて遠くまで走れるように、大容量の上位タイムフレームなら大きな値動きが期待できるわけです。
ポジポジ病の人は、自分の乗り込むEV車を決められません。
そのため、バッテリーの充電時間や、満充電でどこまで行けるかの見当がつきません。
そして、いつの間にか、目の前をウロチョロする5分足や1分足の”原動機付き自転車”に乗り込み、すぐに充電切れになります。
まとめ
一般的に相場分析には”ファンダメンタル”と”テクニカル”の2つがあります。
ファンダメンタル分析では世界的な出来ごとがマーケットに与える影響を推察します。
テクニカル分析では価格の節目、Wボトムといったチャート・フォーメーション、インジケーターがマーケットに与える影響を推察します。
これらは、チャートやニュースという顕在化された情報を見聞きして行うものになります。
これらの分析の、もうひとつ深いところに投資家心理を読み解く”サイクロジカル分析”があります。
ボクのチャート読みは、このサイコロジカル分析になります。
テクニカルやファンダメンタルがマーケットに与える影響を値動きの原因とはせず、その情報を得た投資家がどう感じるかに値動きの原因を求める分析方法です。
判断基準を”投資家心理”ひとつにすることで、テクニカル分析とファンダメンタル分析、インジケーターと水平線、ストキャスととRSI、などなど、正解のない問題に時間を費やさなくなりました。
それが、ただの現象であって、原因になるかどうかわからないとわかったからです。
心が動けば値が動く。
心が動かなければ値は動かない。
こう考えるだけでいいので極めてシンプルです。
そして、今回のテーマである物理が値動きに与える影響についてですが、人の潜在意識の奥には、今までの人生経験から得た”観念”があります。
その観念のなかに人生観や物理があります。
値動きは人生の縮図であり、ロウソク足1本の動きは、人の生涯のようですし、人生は山あり谷ありで、「天井三日、底百日」のように、築き上げるのは大変だけど、信用を失えば築いたものを一夜で失います。
エリオット波動論で3回波打つ現象も、潜在意識にある「マジックナンバー3」という数字への認識と関連がありそうです。
つまり、相場分析のもっと手前にある、人の潜在意識に根づいた”観念”が、値動きに関わっているのではないでしょうか。
もしそうなら、
マーケットは人生で起こる全ての事象を織り込む、
ことになりますね。
◆お断り◆
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コメント
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コメント (9)
動画・ブログ更新ありがとうございます。
大分前に迷晴れさんに「チャートの向こう側の何かが見えていませんか?」という趣旨の質問をしたことがあるのですが、今日その答えを伺ったような気がしました。バッテリーの充電のたとえが非常に分かりやすかったです。
ローソク足がレンジになっていても、売り買いが攻防してエネルギーが溜まり決着がついたら一気に動き出しそうな時と、なんかどっちもやる気がなくて停滞しているだけの時があるような気がして、今日のロンドン勢はやる気がなさそうだなと思った日はチャートよりYouTube見てます笑
その奥へ奥へと進むと、なんか哲学っぽい話になっていきます。内容の抽象度が高いので、腑に落ちる人と、そうでない人とに分かれる気がしました。
今回も楽しく拝見させていただきました。
マヨ晴れさんの戦略の根っこの部分がよく伺えてとても楽しかったです。
チャートパターンを心理に見立て、勝負事とし優位性のある方にポジションを取る。
そして、勝ったらさっさと止める。それを続ける。
正に理想的な短期トレーダーの世界感だなと本当にリスペクトしています。
拝見していて、麻雀やポーカーなどの確率のゲーム、かつ心理戦をやっておられるのだなと思っています。
チャートパターンを相手が捨てた牌と見立て、手札と相手の次の行動を予測する。
勿論、自分からは相手の手札は見えていないので推察に基づき自分の手札から切ってゆくことになるので、いつも勝てる訳ではない。
しかし、大きな優位性と確率論を理解して行動すれば、最終的に高い順目に位置する事ができる。
トレードで上手くいく人はこういったトレード哲学をしっかり固めている人ですね。細かい検証は後からやればいいし、ここをしっかりやっている人は驚くほど吸収が早い。
哲学とは個人が内なる自分と語り合い、その中から抽出してゆくものなのだと思います。
哲学とは別段難しいものではありません。
個人レベルでは自身に内在するものであり、その人の行動決定付ける根幹です。
集団レベルでは皆が協力して仕事をする為に定められた規範の様なものです。これは宗教や神学とも重複する部分があります。
宗教において「何故そうなるのですか?」と問われた聖職者が「この聖なる書物にそう書かれているからだ」と答える様に。
哲学や思想は人から見て笑われる様なものでも一向に構いません。オカルトと揶揄されても一向に構いません。
丁度、投資における手法が側から見て2流とみなされるものでも問題はなく、それを続ければ簡単に利益が上がってしまう様に。
重要なのはそれが明らかにされているかどうか、それに基づいて一貫して行動できるかどうかです。
私も昔ドル円の値動きについて悩み、失敗を繰り返していた時、ふとある考えが浮かびました。
そういえば、私達外為トレーダーは100円〇〇銭だとか現在発行されていない通貨の単位が数pips動いただけで幾ら利益が上がっただとか損失が出たとか言っている。
けれども街ゆく人々に「今、ドル円は幾ら?」と尋ねても、殆どの人が答えられないし、答えたとしても銭単位で答える人なんてほぼいないよな…と。
その後、ドル円に1円刻みで水平線を引いてみて呆れました。
こんな簡単なことに何を悩んでいたんだ、多くの場合1円刻みで抵抗帯があるんじゃないか。これがサイコロジカルなラインじゃないかと気付きました。
いつもピッタリ止まったりはしないが、それなら抜けた方向についていけばいいんじゃないかとも思いました。
この後、日足SMA20と50及び1円刻みの水平線でドル円ではほぼ負けなくなりました。
この時、私の円相場スウィングトレーダーとしての基盤が固まったと振り返っています。
流れを見てついてゆく。逆らわない。奇策は用いない。流れと直感を同調させる。
これが定まれば、後は細かいことですね。
10年以上昔の話ですが昨日の出来事の様に思い出します。
「この後、日足SMA20と50及び1円刻みの水平線でドル円ではほぼ負けなくなりました。」この一節に「それからずっと幸せに暮らしましたとさ」と締めくくるハッピーエンドの物語をイメージしました。
「この後」「それから」の前に、いろんなことが起こりますが、やはり、氷山の下にある本質に気づけた人から転機を迎えていくのですね。
「オズの魔法使い」のカカシやライオンみたいで良いでしょ?
「欲したものは最初から持っていたし、それで十分だった。」こういうの好きです。
こういう物語を信じることによって上手くいく様になったんだな、と思いますね。
外為ではないですが、同時に行なっている株式トレードにおいては「私達は無限に成長し続ける。」的な物語を信じています。
動画アップして下さりありがとうございます。
以前の動画で話しておられた「分からなければレンジを待て」と繋がる感覚があります。
■運動エネルギー=レンジ
■運動モメンタム=トレンド
2点を分けて認識することで、待つべき所と乗る所が分かるようになる。と考えます。
奥行きのある世界なので、同時に見ながら考えながらという所に、頭脳を活用するわけですが、
最近では、分かるようになってきた感覚があります。
昔は、少々極端な表現ですが、全てがチャンス、全てがリスクでしたが、
少なくとも現在は、ブル・ベアの戦いが見えるようになってきました。
チャートがブロックで見えるという感覚です。
このブル・ベアの勝ち馬に乗る事をチャートから読み解く訳ですが、
個人的には、ポイント探しに夢中になり、上位足の影響下にある事が飛んでしまわないように
気をつけなければなりません。
運動エネルギーの中で独り相撲しないように意識致します。
MTF分析の質を高めることに注力し、ダマシ・スパイクと言った動きも見切れるまでに高めます。
相場は、教科書には無い、多くの事を教えてくれると思っています。
「幸せはいつも下流にある、初心者はレンジができるのを待てばいい。」ですね(^_-)-☆毎回、関連動画を探すのですが、この動画を忘れてました。早速、ブログにリンクを貼ります!教えていただき、ありがとうございました。
いつもご教授頂きありがとうございます。テクニカル、ファンダに加えてサイコロジカル、観念という分析の重要性が改めて認識できました。自分も頻発に大口の騙しで焼かれますが、エネルギーの充電という点をもっと意識すれば騙される側から騙す側に回れるのではないかと思います。注目ラインをブレイクしたからすぐ前のめりにならず、もしかしたら上位足のピンバーもしくはツーバーリバーサルになるかもしれないということを忘れないようにしたいです。待つのも相場とよく言いますが、特に為替は横横で値動きの乏しい時間が長いようで、あまりシューティングゲームには向いていないようです。しっかり動き出すタイミングを待ちたいと思います。
時間足ごとのエネルギー充電%がわかるインジケーターがあるといいのですけどね(^_-)-☆